出来高請求の書類をAIで突合する実務手順

公開: 2026-10-06 株式会社1ttan テーマ: 請求・原価

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出来高請求の書類は、出来高報告書と請求書の数字がそろっていることが前提になる。この照合をClaude Codeに任せると、食い違いの一覧が提出前の下書きとして手元に残る。

月末の締めでは、現場から進捗率を聞き、請求書に金額を転記し、前回までの累計と突き合わせる。専門工事業の社長や経理が、この手作業に夜の時間を使う月がある。転記と累計の照合は、手順が決まった比較作業であり、AIが担える。

請求金額の確定と、元請への提出は人が行う。AIが出すのは、整合性の確認結果という下書きである。

出来高請求で食い違いが起きる場所

出来高請求は、契約金額に対する工事の進み具合を、月ごとに請求する仕組みである。請求書には、今回出来高、前回までの累計、残額が並ぶ。数字が3つの列に分かれるため、1か所の転記ミスが累計と残額の両方にずれを広げる。

ずれが生まれる典型は4つある。報告書の進捗率を変更したのに請求書へ反映していない、前回請求の金額を前月の暫定値のまま使っている、追加工事や変更契約の金額が契約額に入っていない、消費税や端数処理の計算が書類ごとに違う、の4つである。

現場の進捗報告と経理の請求書は、別の人が別のファイルで持つことが多い。現場は工程の言葉(足場完了、下塗り完了)で進捗を話し、経理は金額の言葉で請求書を書く。この2つの言葉の間に、転記と換算の作業が挟まり、ずれが入り込む。

当社は建設業向けの実装支援を行っており、書類の転記が複数ファイルをまたぐ場面を現場で見ている。転記をなくせない業務でも、転記後の照合を機械的に行えば、ずれの検出は早まる。検出が提出前に済むことが、差し戻しの手戻りを小さくする。

照合に必要な3つのファイルを用意する

照合に使うのは、契約内訳(契約金額と工種ごとの金額)、今回の出来高報告書(工種ごとの進捗率)、請求書(今回請求額・累計・残額)の3つである。Excelで持っているものはそのまま、PDFはテキストを抽出できる形で渡す。

スキャンしたPDFや写真は、文字の読み取り誤りが入りやすい。金額に関わる数字は、読み取った結果を人が目視で確認してから照合に回す。読み取りに自信のない書類は、Excelに入力し直してから渡すと、結果の信頼性が上がる。

3つのファイルは、案件ごとのフォルダに月別のサブフォルダを作って置く。「2026-10」「2026-09」のように並べておくと、前月までの累計をClaude Codeが前月フォルダから読める。前月の請求書が累計の根拠になるため、前月分の保存を欠かさない。

元のファイルを上書きしないことを、指示の最初に書く。結果は「seigou_2026-10.md」のように別ファイルに出させる。請求書そのものをAIに直させず、差異の報告だけを受け取る。これで、元の書類が意図せず書き換わる事故を避けられる。

整合チェックのプロンプト実例(架空データでの実行例)

次の例は、架空の防水工事業者が、架空の元請に出す2026年10月分の出来高請求を照合する、架空データでの実行例である。工事名、金額、進捗率はすべて架空で、実在の案件とは関係がない。

プロンプト例: 「このフォルダの keiyaku_naiyaku.xlsx、dekidaka_houkoku_2026-10.xlsx、seikyu_2026-10.xlsx を照合してください。次の点を確認し、食い違いがあれば表にしてください。(1)報告書の工種ごとの進捗率と契約内訳の金額から計算した今回出来高が、請求書の今回出来高と一致するか。(2)請求書の累計が、2026-09フォルダの請求書の累計に今回出来高を足した額と一致するか。(3)残額が、契約金額から累計を引いた額と一致するか。(4)消費税の計算と端数処理が全書類で同じ方法か。書類は修正せず、報告だけをしてください。計算はPythonで行い、式を示してください。」

架空の契約は税抜1,000万円で、工種は下地補修260万円、防水層240万円、仕上げ500万円の3つとした。今回の進捗は、報告書では防水層が6割、下地補修は前月までに完了、仕上げは未着手である。Claude Codeは防水層の今回出来高を240万円の6割で144万円と計算し直し、請求書の156万円と12万円の差があると報告した。原因は、請求書側で進捗率が6.5割で入力されていたことだった。

同じ12万円のずれは、累計と残額にも波及していた。請求書の累計は前月の260万円に今回の156万円を足した416万円、残額は584万円で、請求書の内部では整合している。ずれの出どころは進捗率の1か所だけで、報告書と請求書のどちらが正しいかは、現場に確認して人が決める。

確認項目報告書から計算請求書結果
防水層の今回出来高144万円156万円12万円の差
累計(前月260万円+今回)404万円416万円今回出来高の差が波及
残額(契約1,000万円-累計)596万円584万円今回出来高の差が波及
消費税・端数処理切り捨て切り捨て一致

差異が出たときの扱い方

差異の原因は、報告書側の誤り、請求書側の誤り、変更契約の反映漏れの3つに分かれる。Claude Codeは差を見つけるが、原因の特定には現場の確認が要る。AIの報告には「どちらが正しいかは判断しない」と明記させておく。

現場への確認は、AIが出した差異の表をそのまま現場責任者へ送れる形にしておくと進みやすい。「防水層の進捗率が、報告書で6割、請求書で6.5割になっています。どちらが現場の実績に合いますか」と、問いの形で書かせる。問いを作るところまでをAIに頼み、送るのは人が行う。

確認の結果、報告書の6割が正しいと分かれば、請求書の進捗率を人が直す。直した請求書は、もう一度同じプロンプトで照合する。再照合で差異がなくなれば、提出前の整合チェックは完了である。直してから再照合する流れを、手順に組み込んでおく。

差異と修正の履歴は、月ごとの照合結果のファイルに残す。「10月分は防水層の進捗率が食い違い、現場確認のうえ6割に修正した」という一文が残れば、元請から質問されたときの説明材料になる。記録も、Claude Codeに「今回の差異と対応を3行でまとめて」と頼める。

AIに任せない線:請求額の確定と提出

請求額を決めるのは人である。出来高には、現場の実績を誰がどう評価するかという判断が含まれる。進捗率の査定、出来高の取り方についての元請との合意、変更契約の扱いは、契約と信頼関係に基づく判断であり、AIの照合の対象外である。

請求書を提出する前に、社長か経理責任者が全体を見る。AIの照合が一致を示しても、元請との合意内容に沿った書類かどうかまでは確認できない。出来高の取り方が現場ごとに違う場合は、その合意を文書にしておき、プロンプトにも条件として書く。

金額に関わる書類は、AIの読み取りや計算を最終の根拠にしない。計算結果は電卓や表計算ソフトと突き合わせ、重要な数字は人が見て確認する。「計算はPythonで行い、式を示してください」という指示を足すと、計算の過程を人が追いやすくなる。

送信は人が行う。メールで請求書を送る場合、Claude Codeに本文の下書きは頼んでも、宛先を確認して送信するのは人である。元請に出る書類は、会社の信用に関わる。AIが下書きと照合、人が確定と提出という分担を、社内の手順書に書いて共有する。

月次の運用に組み込む

照合は、月末の請求書作成の直後に走らせる。現場から進捗報告が届いた日に、報告書と請求書をフォルダに置き、プロンプトを実行する。照合結果のファイルが出るところまでを、請求書作成の手順の最後に固定する。

プロンプトは、案件ごとの条件(出来高の取り方、消費税の処理、変更契約の有無)を冒頭に書く専用欄を持たせた共通ファイルにする。案件が増えても、条件欄を書き換えるだけで照合が始まる。条件欄が埋められない案件は、元請との取り決めが曖昧だというサインにもなる。

請求書のほかに、発注者への出来高報告書、下請への支払通知、支払予定の資金繰り表も、同じ型で整合を取れる。比較する2つの書類を決め、一致しない行を出させる型は共通である。月次の締めの中で、小さな照合を重ねる運用に広げられる。

当社は自社の自動化を13本(2026年7月時点)運用している。定型の比較は、人が確認する前提を置けば安定して動く部類である。出来高請求の整合チェックは、書類の誤りが提出後に見つかる不安を、提出前の確認に変える使い方になる。

よくある質問

Q. スキャンした請求書のPDFでも照合できるか。

A. 読み取れるが、金額の読み取り誤りが起こりうる。読み取った数字は人が目視で確認してから照合に回す。自信のない書類は、Excelに入力し直して渡す。

Q. 請求額そのものをAIに計算させてよいか。

A. 計算の下書きは任せられるが、確定は人が行う。進捗率の査定や変更契約の扱いは判断を含むため、社長か経理責任者が決める。

Q. 元請ごとに書式が違っても使えるか。

A. 使える。プロンプトの冒頭に、元請ごとの出来高の取り方と書式の条件を書く欄を設け、案件ごとに書き換える。照合の骨格は共通で使える。

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