建設業の見積プロンプト実例:単価マスタ突合を任せる手順
公開: 2026-10-06 株式会社1ttan テーマ: 見積・単価
見積・単価の全体像から読む場合は 見積書AI下書き、建設業の実務手順2026 から。
建設業の見積プロンプトで最初に任せる仕事は、単価マスタとの突合である。見積書の各行が社内の単価表と合っているかを確かめる作業は、手順が決まっていて、Claude Codeが得意とする分野だ。
専門工事業の見積は、材料単価の改定、労務単価の見直し、外注先の見積差し替えが重なって、行ごとに単価がずれていく。社長が夜に見積書を見返し、前回の物件と単価が違う行を目で探す。この確認をClaude Codeに渡せる。
図面から数量を拾う作業と、提出する金額の最終判断は人が持つ。AIが出すのは、食い違いの一覧という下書きである。この線を引いたうえで、実際のプロンプトを組み立てる。
見積書の単価ずれは、改定のたびに生まれる
見積書の単価がずれる原因は、更新の時間差にある。材料メーカーの価格改定は月単位で届き、労務単価は年度で変わり、外注先の見積は物件ごとに違う。Excelの見積書に前回の単価がコピーされたまま残ると、マスタと見積書が静かに食い違っていく。
食い違いは、提出後に発覚すると痛い。安すぎる行は粗利を削り、高すぎる行は競合に負ける理由になる。どちらも、提出前の突合で拾えた差である。突合は地味な作業で、繁忙期には後回しになる。この後回しをClaude Codeに肩代わりさせる。
突合の中身は3つに分けられる。マスタに存在しない品名の検出、マスタ単価と見積単価の差、単位の取り違え(㎡とm、式と本)である。いずれも比較と照合であり、判断の要らない部分が大半を占める。残る判断は、差が出た理由が正当かどうかの一点に絞られる。
当社は外壁塗装SaaSの利用登録が600社を超え、単価マスタの持ち方が会社ごとに違うことを日々見ている。品名の書き方、単位の選び方、改定日の残し方に決まった型はない。型がないからこそ、突合の指示には会社ごとの条件を明記する必要がある。
単価マスタをCSVにして、見積書と同じフォルダに置く
Claude Codeに渡す準備は2つのファイルで済む。1つは単価マスタ、もう1つは検証する見積書である。どちらもExcelで持っているなら、CSVで書き出して同じフォルダに置く。フォルダ名を物件名にしておくと、後から探しやすい。
単価マスタの列は最小限でよい。品名、規格、単位、単価、改定日の5列があれば突合は回る。品名の表記ゆれ(「シーラー」と「下塗りシーラー」など)が多い会社は、別名の列を足す。別名列の作成も、Claude Codeに「表記ゆれの候補を出して」と頼める。
見積書側は、品名・数量・単位・単価・金額の5列を読めればよい。複数シートに分かれたExcelは、シートごとにCSVへ出す。結合セルや空白行が多い見積書は、先にClaude Codeへ「1行1明細のCSVに整形して」と頼むと、その後の突合が安定する。
元データは必ずコピーして使う。最初の指示に「元ファイルは上書きしない。結果は別ファイルに出す」と書いておけば、マスタや見積書を壊す事故を防げる。顧客名や原価が入った本物のデータは、社内で渡してよい範囲を決めてから使う。
突合プロンプトの実例(架空データでの実行例)
次のプロンプトは、架空の塗装工事業者の見積書を、架空の単価マスタと突き合わせる架空データでの実行例である。以下の品名と単価はすべて架空で、実在の会社や実際の単価とは関係がない。
プロンプト例: 「このフォルダの tanka_master.csv と mitsumori_A邸.csv を突き合わせてください。見積書の各行について、(1)マスタに同じ品名・規格があるか、(2)単位が一致するか、(3)単価の差がいくらか、を調べてください。マスタにない行と、単価差が1円以上ある行だけを、行番号・品名・見積単価・マスタ単価・差の種類の表にしてください。元のファイルは変更せず、結果は sagai_A邸.csv に出力してください。数量と金額の合計は計算し直さず、見積書の値をそのまま使ってください。」
実行すると、Claude Codeは2つのCSVを読み、行ごとに照合するスクリプトを書いて動かす。架空の見積書は42行で、結果は3行だった。12行目は「シリコン上塗り」の単価がマスタより80円高い。27行目は「ケレン作業」の単位が見積書では「式」、マスタでは「㎡」。35行目は「高圧洗浄」がマスタに存在しない。
この3行は、見積書を上から目で追うと見落としやすい種類のずれである。AIは差を見つけるまでを担い、80円の差が前回の値引き交渉の名残なのか入力ミスなのかは判断しない。出力に「確認が必要な理由の候補」を付けさせることもできるが、候補は参考にとどめ、結論は人が出す。
| 行 | 品名(架空) | 見積単価 | マスタ単価 | 差の種類 |
|---|---|---|---|---|
| 12 | シリコン上塗り | 2,480円/㎡ | 2,400円/㎡ | 単価差 +80円 |
| 27 | ケレン作業 | 18,000円/式 | 1,200円/㎡ | 単位の不一致 |
| 35 | 高圧洗浄 | 350円/㎡ | (該当なし) | マスタに未登録 |
出力の読み方:人が見るのは差の理由だけ
出力された差分表は、上から順に「正当な差」と「直すべき差」に仕分ける。正当な差とは、物件固有の値引き、数量割引、外注先の個別見積などである。直すべき差は、前回単価のコピー残りや単位の取り違えである。仕分けの基準は、見積担当と社長の間で先にそろえておく。
仕分けの結果は、そのままClaude Codeに戻して構わない。「12行目は正当な差。27行目は見積書の単位を㎡に直す。35行目はマスタに追加する」と伝えれば、修正案の見積書と更新したマスタを別ファイルで出す。修正を反映するかどうかは、差分を確認してから人が決める。
差分を見る作業は、見積書全体を読み直す作業より軽くなる。見る対象が差の出た行に絞られるからである。社長が夜に全行を読み返していた時間を、差の出た行の確認に回せる。ただし、時間がどれだけ変わるかは会社ごとに違い、ここで数字は約束しない。
同じ見積書に対して突合を2回走らせ、結果を比べる方法もある。2回の結果が一致すれば、照合の取りこぼしは小さいと判断できる。一致しない行が出たら、その行は人が直接見る。出力の再現性を確かめる追加の手間は小さく、金額に関わる書類では試す価値がある。
AIに任せない線:数量拾いと最終金額
突合プロンプトが扱うのは、見積書とマスタという2つの表の比較である。図面から数量を拾う作業は範囲に入れない。図面の寸法や開口部の控除を読み違えると、数量が大きくずれ、そのまま金額に響く。図面の数量拾いは、人が責任を持つ。
見積書の最終金額も人が決める。Claude Codeが出すのは、食い違いの一覧という下書きである。提出する見積書は、社長か見積担当が全体を見て、粗利と競合状況を踏まえて確定する。下書きまでがAI、最終判断は人という線を、社内の手順書に一文で書いておく。
顧客に出す見積書は、金額の誤りが信用と契約条件に直結する。AIの突合を通したという理由で確認を省く運用は避け、突合を通した見積書にも提出前の目視確認の工程を残す。AIは確認の入口を絞るが、確認そのものの代わりにはならない。
AIの突合が見逃すものもある。マスタ自体が間違っていれば、マスタと一致した誤りは検出されない。マスタの単価を更新する責任者を決め、改定日を列に残しておく。突合の精度は、マスタの鮮度で決まる。
プロンプトを育てる:拾えなかった差を次に生かす
最初のプロンプトは、完成形でなくてよい。1物件で走らせて、拾えなかった差や誤検出を記録し、次の指示に足していく。たとえば「単価差が10円未満の行は『軽微』として別の列に分けてください」と足すだけで、確認の優先順位がつく。
うまくいった指示は、フォルダ内の「見積突合の手順.md」に保存する。次の物件では、Claude Codeにこのファイルを読ませるだけで同じ突合が始まる。当社は自社の業務で自動化を13本(2026年7月時点)動かしており、手順をファイルに残す運用が再利用の土台になっている。
見積担当が複数いる会社は、プロンプトを共有ファイルにして全員が同じ指示を使う。担当者ごとにプロンプトが違うと、突合の基準もずれる。基準を1か所に置けば、単価の見方が社内でそろう。基準を変えたときは、変更の理由と日付をファイルに残す。
同じ型は見積以外の書類にも使える。発注書と納品書の突合、下請への支払通知と契約額の突合などである。比較する2つの表を用意して、一致しない行だけを出させる型は共通である。まず見積の突合で型に慣れ、次の書類へ広げる。
よくある質問
Q. 単価マスタが複雑なExcelでも使えるか。
A. 使える。CSVに書き出して渡す。結合セルや複数シートで読みにくい場合は、先にClaude Codeへ1行1明細のCSVへの整形を頼み、整形後の行数を元の表と照らして確認する。
Q. 見積の金額までAIが決めてくれるか。
A. 決めない。Claude Codeが出すのは、マスタとの食い違いを示す下書きである。提出する金額は、粗利と競合状況を踏まえて社長か見積担当が確定する。
Q. 顧客名の入った見積書を渡して問題ないか。
A. 社内の情報管理ルールに沿って決める。顧客名や物件名を記号に置き換えてから渡し、結果を受け取った後に人が元に戻す方法もある。
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