建設業の原価管理を現場別にAIで集計する手順

公開: 2026-10-06 株式会社1ttan テーマ: 請求・原価

請求・原価の全体像から読む場合は 建設業の請求書集計をClaude Codeで自動化する から。

建設業の原価管理を現場別に出す作業は、請求書の集計をAIに任せると回り始める。仕入先や外注先から届く請求書を現場別の原価表の下書きにする作業を、Claude Codeが担える。

数名から30名規模の専門工事業では、材料費や外注費が、現場名の揺れた請求書に埋もれやすい。「北町マンション」「北町M」「北町 外壁」が別の行になり、現場別の合計が実際の原価とずれる。社長が月末にまとめて確認する作業は、このずれの修正に時間を取られる。

AIの仕事は、現場名の寄せ、費目の分類、集計表の下書きまでだ。原価に計上してよいか、どの現場に付けるかの最終判断は人が持つ。この線を先に引いておくと、数字に関わる作業でも安全に使える。

現場別の原価表が崩れる原因は現場名と費目の揺れ

請求書の現場名は、書く人によって揺れる。仕入先の担当者が略称で書くこともあれば、自社の職人が電話で伝えた名前をそのまま書くこともある。揺れた名前が別の現場として集計され、原価表の行が増えて合計が合わなくなる。

費目の揺れも同じ構造だ。塗料は材料費、足場は外注費、ビスや養生テープは消耗品費と、請求書の品名から費目を決める作業が毎月発生する。判断の基準が担当者の頭にあると、月によって分類が変わる。

原価表づくりは後回しになりやすい。完成して請求が終わってから粗利を見る流れでは、赤字に傾いた現場に途中で手を打てない。月次で現場別の原価が見える状態にしておくと、追加工事の相談や職人の配置を、数字を見ながら決められる。

現場名と費目の寄せは、AIが得意とする揺れの吸収にあたる。人が一行ずつ見ていた作業を、ルールを渡して下書きさせ、人は例外だけを確認する形に変えられる。

入力は請求書・日報・現場マスタの4種類

原価表の材料になるのは、仕入先の請求書、外注先の請求書、職人の作業日報、現場マスタの4種類だ。請求書は会計ソフトの仕訳データか、請求書を一覧にしたExcelがあれば、AIに渡す形にそろう。PDFだけが手元にある場合は、明細を読み取る工程が増える。

現場マスタが、集計の土台になる。正式な現場名、請求書で使われがちな別名、実行予算の金額を1行ずつ書いたExcelだ。別名の欄に「北町M」「北町 外壁」を足しておくと、AIが現場名を寄せるときの根拠になる。

労務費は、日報の時間に単価を掛けて出す。単価は社内の取り決めで決まるもので、AIが決める数字ではない。単価表を別ファイルで渡し、掛け算と集計だけをAIに頼む。

ファイルの内容はAIの処理のために外部へ送信される。取引先名や金額が入るため、渡す範囲は社内の取り扱いの決まりに沿って先に決める。社外秘の単価表は、必要な列だけを抜き出して渡す。

入力中身AIに任せる作業
仕入先の請求書材料・資材の品名と金額現場名の寄せ・費目の分類
外注先の請求書足場・電気・左官などの外注費現場名の寄せ・外注費への集計
作業日報現場ごとの人数と作業時間現場別の労務費の下書き
現場マスタ現場の正式名・別名・実行予算名前の寄せ先と予算との比較

架空データでの実行例: 請求明細から現場別原価表へ

以下は架空データでの実行例だ。架空の設備工事会社C設備工業が、2つの現場にまたがる請求明細を4行持っている想定で、Claude Codeに現場別の集計を頼む。会社名・現場名・金額はすべて架空で、実在のものとは関係がない。

プロンプト例: 「seikyu_meisai.csv は今月届いた請求明細、genba_master.xlsx は現場マスタだ。明細の現場名を、マスタの正式名か別名に照らして寄せてほしい。費目は『材料費』『外注費』『消耗品費』のいずれかに分類し、判断した根拠を1行で添えてほしい。マスタに一致しない明細は、無理に寄せず『未分類』に入れる。最後に、現場別・費目別の集計表を出し、合計をPythonで再計算してほしい。」

明細は、「北町M 塗料 120,000円」「北町マンション足場 300,000円」「西町ビル 防水材 95,000円」「現場不明 ビス 8,000円」の4行だ。AIは最初の2行を北町マンションに寄せ、3行目を西町ビルに寄せる。4行目は現場名がマスタにないため、未分類に残す。

未分類の1行を、AIは勝手にどちらかの現場へ振らない。経理担当が請求書の原本と日報を見て、どの現場で使った消耗品かを決める。決まったら、現場マスタの別名に足す。同じ書き方の請求が来たとき、次の月から自動で寄る。

現場材料費外注費消耗品費合計
北町マンション120,000円300,000円0円420,000円
西町ビル95,000円0円0円95,000円
未分類0円0円8,000円8,000円

実行予算との差を出して、月次で見る

現場別の集計ができたら、実行予算との差を並べる。現場マスタに実行予算の列があれば、AIが原価の累計と予算の差額を計算できる。架空の数字で言えば、北町マンションの予算が50万円で、今月までの原価が42万円なら、残りは8万円と表に出る。

プロンプト例: 「集計表と現場マスタの実行予算を比べ、現場別に予算・原価の累計・残額を出してほしい。残額が10万円を下回る現場には『要確認』と付ける。どの費目が予算を押し上げているかも、1行で添えてほしい。」

残額が小さい現場に印が付くと、社長は月次の確認で見る現場を絞れる。追加工事の費用を元請に相談するか、外注の発注を止めるかといった判断は、印を見たあとに人が行う。AIは判断の材料を並べる役だ。

実行予算の金額そのものは、AIが決めない。見積の積み上げと現場の経験から人が決めた数字を、マスタに入れて渡す。予算が甘ければ、残額の表も甘くなる。

AIに任せない作業と、最終確認の線

図面からの数量拾いは、AIに任せられない。図面の寸法や仕様を読み違えると、材料費の予算そのものがずれる。数量は人が拾い、AIには拾った数量を使った集計だけを頼む。

どの現場にどれだけ原価を付けるかの判断も、人が持つ。複数の現場で使った材料の按分や、完成工事原価に入れる時期の判断は、会計上の取り扱いに関わる。迷う行は税理士に確認し、その結論をルールとしてメモに残す。

AIの集計表は下書きだ。月次の数字として社内に回したり、金融機関や元請に出したりする前に、人が請求書の原本と照らして確認する。下書きまでがAI、最終判断は人という線は、原価の数字でも変わらない。

AIが分類した理由の列は、確認を速くする。根拠が1行で添えてあれば、経理担当は納得できない行だけを原本で確かめられる。全行を見直す作業には戻らない。

月次で回すためのフォルダとルールの育て方

月ごとにフォルダを作り、請求明細、日報、AIの集計表、確認の記録を同じ場所に置く。プロンプトも同じフォルダの隣に保存し、翌月は保存したプロンプトを呼ぶだけで集計が始まる。

最初の月は、未分類の行が多く出る。出た行を1つずつ現場マスタの別名と費目のルールに足していくと、翌月から寄る行が増える。ルールを育てる作業が、そのまま会社の原価管理の標準になる。

1つの現場から始めて、現場数を増やす。最初は、請求書の数が少なく、現場名の揺れも把握しやすい現場が向いている。集計結果が経理担当の手計算と一致する月を1回作ってから、他の現場へ広げる。

自社でも自動化を13本運用している(2026年7月時点)。建設業向けの実装支援も行っており、会社ごとの請求書の形式や費目の分け方に合わせた設計の相談に乗れる。

よくある質問

Q. 請求書がPDFだけで、Excelの一覧がない場合でも使えるか

A. 使える。PDFの明細を読み取る工程が増え、読み違いも出る。読み取った金額は人が原本と照らして確認する。会計ソフトの仕訳データを書き出して渡せるなら、そちらから始めると読み違いの心配が減る。

Q. 現場別の原価表は、会計ソフトの機能で足りるか

A. 会計ソフトに現場別の管理機能があれば、それを使う。機能がない場合や、請求書の現場名が揺れてタグ付けが追いつかない場合に、AIによる寄せと分類の下書きが役に立つ。

Q. AIの分類をそのまま信じてよいか

A. 下書きとして扱う。根拠の列を見て、納得できない行と未分類の行だけを人が原本で確認する。月次の数字として使う前の最終確認は人が行う。

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