CAD図面の手書き修正をAIが反映する検証

公開: 2026-09-18 株式会社1ttan テーマ: 図面・数量

図面・数量の全体像から読む場合は 図面の数量拾いはAIでどこまでできるか から。

現場で赤ペンを入れた図面を、CAD図面に戻す作業は、多くの専門工事業で若手や図面担当の手作業に頼っている。竣工図を開き、シンボルを一つずつ動かし、レイヤーを整理し直す。

当社は2026年8月、架空データでの実行例として、架空の竣工図サンプルを使い、現場の手書き加筆をAIに読み取らせてDXFへ反映する検証を行った。結果、撤去と増設を別レイヤーに分けた改修反映版のDXFが、最後まで出力できた。

反映が遅れると、次工程の見積や発注が止まる。赤ペン図面が机に積み上がったまま、提出期限だけが近づく状況は珍しくない。

赤ペン修正がCAD図面に反映されるまでの現場の実情

改修工事や修繕工事では、現場担当者が既存の竣工図に赤ペンで変更点を書き込み、それを事務所に持ち帰ってCAD図面へ反映する流れが一般的だ。

この反映作業は、シンボルの位置を一つずつ確認し、既存のレイヤー構成を壊さないよう手作業で移動させる。慣れた担当者でも、図面の規模によっては相応の時間がかかる。

専任のCADオペレーターを抱える会社は限られる。数名から30名規模の専門工事業では、社長や工事担当者が本来の業務の合間にこの作業を担っていることが多い。

反映を待つ間、次工程の見積や資材発注が動かせない。赤ペン図面が机に積み上がったまま、提出期限だけが近づく状況は珍しくない。

架空の竣工図で試した3段階のパイプライン

当社は2026年8月、架空データでの実行例として、架空の竣工図サンプル(照明配置図、縮尺1/100)を使い、現場の手書き加筆をAIで反映する検証を行った。実在の物件データは使っていない。

手順は3段階である。まず竣工図のCAD/DXFデータを用意する。次に、現場で紙に赤ペンを書き込んだ図面をスキャンした画像を用意する。事務室の照明1つに×印と「撤去」の文字、会議室に丸印と「照明1灯追加」の文字を入れた。

最後に、この画像をAIに読み取らせ、Claude CodeにPythonのezdxfライブラリを操作するコードを書かせて、改修反映版のDXFを出力させた。パイプラインは最後まで動いた。

竣工図、現場の手書き加筆、AIが反映した改修版DXFを並べた3コマの比較図
架空の竣工図サンプルでの実行例。左から、元の竣工図(DXF)、現場での赤ペン加筆、AIが読み取って反映した改修版(LIGHT_NEW / LIGHT_REMOVED レイヤーを追加)

AIが画像を読み取り、Claude Codeがコードで図面を書き換える仕組み

仕組みは、画像認識とCAD操作を分けている。AIは赤ペン画像から「どこに」「何を」「どう変更するか」を読み取り、テキストの指示に変換する。

その指示を受けたClaude Codeが、ezdxfライブラリを使ってDXFファイルを直接書き換えるPythonコードを生成し、実行する。人がCADソフトを画面上で操作する工程はない。

プロンプト例: 「現場写真のとおり、事務室の照明1灯を撤去、会議室に照明1灯を増設したい。撤去した照明はLIGHT_REMOVEDレイヤーへ移し、破線の×印と『撤去』の文字を追加してほしい。増設分はLIGHT_NEWレイヤーに新規追加し、『増設』の文字を添えてほしい。元のレイヤー構成は変更しないでほしい。」

この指示に沿って、Claude Codeはレイヤーの追加、シンボルの複製、文字の配置までを一括で行った。

出力されたDXFの中身

出力ファイルでは、撤去対象の照明シンボル(円と十字線)がLIGHT_REMOVEDレイヤーへ移され、破線の×印と「撤去」の文字が追加されていた。

増設分はLIGHT_NEWレイヤーに照明シンボルと「増設」の文字が新たに配置されていた。

元のレイヤー構造は壊れていない。既存のレイヤーに変更を紛れ込ませず、追加分と撤去分がレイヤー単位で見分けられる状態になっている点は、そのまま社内資料や次工程への申し送りに使える形だ。

任せられる範囲と、人が最終確認する範囲

今回の検証でAIが決めた照明の位置は、相対位置の解釈に基づいている。「既設2灯の中間の下」といった読み方で座標を決めている。改修の指示図としては足りる精度だが、寸法精度が必要な施工図には人による最終確認が要る。

図面の良し悪しや納まりの判断は、AIに任せられない。柱や梁との干渉、法規上の制約といった判断が必要な施工図は、この仕組みでは扱えない。

下書きまでがAIの役割であり、最終判断は現場責任者が担う。反映されたDXFをそのまま提出図面として使わず、必ず目視で確認する工程を挟む必要がある。

導入する前に確認すべきこと

この検証は架空の竣工図サンプルを使ったものだ。実際の図面はレイヤー名や画層構成が会社ごと、物件ごとに異なるため、同じ手順がそのまま同じ結果になるとは限らない。

導入を検討する場合は、自社が使っているCADのレイヤー命名規則やシンボルの登録状況を先に整理しておく必要がある。規則が曖昧なまま試すと、AIの読み取り精度も落ちる。

まず1枚の図面と1〜2箇所の修正指示で、AIの解釈を確認するとよい。本番の改修図面はその後に回す。

当社はAI変革コンサルとして30社以上の伴走実績があり(上場企業含む)、建設業向けの実装支援も行っている。図面まわりのAI活用を検討する際の相談先として想定しておくとよい。

よくある質問

Q. この検証は実際の物件データを使っていますか。

A. 使っていない。架空の竣工図サンプルを使った実行例であり、実在する物件の図面ではない。

Q. AIが出力したDXFをそのまま提出図面として使えますか。

A. 使えない。位置の判断は相対位置の解釈に基づいており、寸法精度が必要な施工図には人による最終確認が要る。

Q. 自社のCADファイルでも同じ結果になりますか。

A. レイヤー名や画層構成は会社ごとに異なるため、同じ手順で同じ結果になるとは限らない。まず自社の図面ルールを整理してから試すとよい。

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