品質管理写真の整理と台帳化をAIで進める

公開: 2026-09-29 株式会社1ttan テーマ: 工事写真・台帳

工事写真・台帳の全体像から読む場合は 工事写真台帳をAIで自動化する現場の設計 から。

現場から上がってくる品質管理写真は、工種ごと・日付ごとの振り分けだけで半日仕事になることがある。ファイル名は現場ごとの慣習が残ったままで統一されず、台帳への転記も手作業という専門工事業は多い。

AIに任せられるのは、写真の内容から工種・部位・日付を読み取っての仮分類と、台帳フォーマットへの流し込みまでだ。提出書類としての最終確認と、現場写真としての体裁チェックは人の仕事のまま残る。

品質管理写真の整理がいつも後回しになる理由

品質管理写真は撮った時点では現場の記録として十分でも、提出用の台帳に落とし込む段階で工種・日付・部位のタグ付けが必要になる。現場担当者は撮影した端から次の作業に移るため、整理は事務所に戻ってからのまとめ作業になりやすい。

スマートフォンやタブレットで撮影した写真は、機種によってファイル名の付き方が違う。IMG_から始まる連番のまま送られてくると、後から見て何の写真か分からず、結局は開いて中身を確認する作業が発生する。

工事が複数現場で並行すると、写真フォルダも現場数だけ増える。台帳のフォーマットが元請ごとに違う場合は、同じ写真を複数の形式に転記する二度手間も起きる。

整理が後回しになった写真は、提出直前にまとめて処理することになり、抜けや誤りに気づきにくい。段階確認や出来形確認の直前に慌てて探す事態も珍しくない。

AIに整理を任せる前に決めておくこと

AIに写真の分類を任せる前に、工種・部位・日付・現場名という最低限の分類軸を先に決めておく必要がある。分類の軸が現場ごとにばらついていると、AIが仮に分類してもあとで統合する手間が増える。

ファイル名の命名規則も同様だ。「現場名_工種_年月日_連番」のような形式を1つ決め、AIにはその形式に沿った命名を指示する。命名規則を決めずに依頼すると、AIが独自の解釈で名付けてしまい、結局は人が付け直すことになる。

台帳のテンプレートも先に用意する。既存のExcelやスプレッドシートの列構成をAIに渡せば、その構成に合わせて転記できる。テンプレートがない状態で依頼すると、AIは一般的な様式を推測して作るため、現場で使っている書式とずれが出る。

写真データそのものの受け渡し方法も決めておく。クラウドフォルダに一括で置く方法と、チャットでまとめて渡す方法では、AIが読み取れる枚数や処理の単位が変わる。

架空データでの実行例。分類とファイル名の下書き

架空データでの実行例として、外壁塗装工事の下地処理写真20枚を分類する場面を想定する。ファイル名はIMG_0001からIMG_0020までの連番で、撮影日時の情報だけが残っている状態だ。

プロンプト例: 「添付した写真20枚について、撮影日時のEXIF情報と写真の見た目から、工種(下地処理・ケレン・シーラー塗布のいずれか)を推定し、『現場名_工種_年月日_連番』の形式でファイル名案を一覧にしてください。判断に迷う写真は理由と一緒に別枠で示してください」

この指示に対してAIが返すのは、あくまで見た目とファイル情報からの推定だ。ケレンとシーラー塗布は写真の色味が近く誤認識が起きやすいため、AIは自信度の低い写真を別枠に分けて返す設計にしておくと、確認すべき写真がひと目で分かる。

出てきたファイル名案は、そのまま一括適用せず、現場担当者が現物と突き合わせてから確定する。特に足場の位置や養生の有無など、写真の背景情報まではAIが正確に読み取れないことがある。

台帳への転記をAIに下書きさせる

分類が終わった写真は、台帳フォーマットへの転記もAIに下書きさせられる。ファイル名に工種・日付・部位の情報が入っていれば、それを読み取って台帳の該当セルに流し込む案を作れる。

プロンプト例: 「このファイル名一覧を、添付の台帳フォーマット(列: 日付・工種・部位・写真番号・備考)に沿って転記案を作ってください。備考欄は写真から読み取れる範囲で簡潔に記入してください」

備考欄の記述は、AIが写真の見た目から推測した内容になる。実際の施工条件や指示内容までは写真から読み取れないため、備考欄は下書きとして扱い、現場担当者が現物の記憶と照らして書き直す前提で使う。

台帳は提出書類としてそのまま元請や発注者の目に触れる。転記漏れや誤記は現場の信用に関わるため、AIが作った下書きを社長や現場代理人が一度は通して確認する工程を省かない。

工程AIが下書きする範囲人が確認・確定する範囲
写真の分類工種・部位の仮分類、ファイル名案の作成現物との突き合わせ、誤分類の修正
台帳への転記フォーマットに沿った転記案、備考欄の下書き施工条件との整合確認、提出前の最終確認
提出書類化PDF化や体裁の下書き元請・発注者への提出可否の判断

AIが苦手なこと

写真からの工種判定は、似た工程ほど精度が落ちる。下地処理とケレンのように見た目が近い工程では、AIの推定と実際の作業内容がずれることがあり、現場を知っている人の目でしか正しく判別できない場面が残る。

図面や仕様書と写真を突き合わせて、施工基準を満たしているかどうかを判断する作業は、AIに任せられる範囲を超える。品質基準への適合判断は、資格と経験を持つ人が行う工程として残す。

写真の中に写り込んだ第三者や近隣の建物など、提出前に確認すべき配慮事項の判断も人の役割だ。AIは写真の内容を説明はできても、提出の可否まで判断する立場にはない。

小さく始める導入の進め方

いきなり全現場の写真整理をAIに任せると、分類のずれに気づかないまま台帳が積み上がる。まず1現場・1工種分の写真で試し、命名規則と台帳フォーマットがAIの出力とかみ合うかを確認する。

試した結果を見て、命名規則やプロンプトの指示を調整する。数回のやり取りで分類の精度が安定してきたら、対象の現場数を広げていく。

整理の運用が固まったら、現場担当者が撮影後にどこまで自分でファイルを渡すか、事務所側でどこから先をAIに任せるかという役割分担も決めておくと、毎回の依頼がぶれない。

よくある質問

Q. 品質管理写真の整理を丸ごとAIに任せられるか。

A. 分類やファイル名、台帳への転記の下書きまでは任せられる。ただし施工基準への適合判断と提出可否の最終確認は、資格と経験を持つ人が行う。

Q. 写真の枚数が多い場合、AIに一度に渡せるか。

A. 一度に渡す枚数が多いほど誤分類も増えやすい。1現場・1工種など小さい単位で試し、精度を確認しながら対象を広げるほうが手戻りが少ない。

Q. どんな環境でAIに写真整理を任せられるか。

A. 写真ファイルとプロンプトを扱える環境であれば実行できる。1ttanでは自社の書類仕事の自動化を13本運用しており(2026年7月時点)、建設業向けにこうした仕組みづくりの実装支援も行っている。

あわせて読む

  • 外壁塗装工事写真をAIで3点セット整理する

    外壁塗装の工事写真を、施工前・中・後の3点セットと黒板読み取りでAIに整理させる設計を示す。判別できない写真を未分類に残す線引きと、命名規則を現場に合わせて微調整する運用を、架空データの実行例で解説する。

  • 防水工事の写真台帳をAIで整理する方法

    防水工事の写真台帳は、下地・プライマー・防水層・トップコートなど層ごとに撮影が要る点が他工種と違う。AIによる写真仕分けの実行例と、層の順序判断を人に残す理由を解説する。現場が確認すべき撮影不足の見分け方も示す。

  • 空調工事の写真台帳をAIで作る隠蔽部の記録術

    空調工事は配管やダクトが天井裏に隠れ、竣工後は写真でしか確認できない。AIで現場写真とメモから工種別・部位別の写真台帳の下書きを作る手順、撮影時に外せないチェック項目、提出前に人が見るべき箇所を整理した。

  • 産廃マニフェストの控え整理、AIに任せる範囲とJWNETの外側

    産業廃棄物の電子マニフェストの控えを月次で集計・整理する作業をAIにどこまで任せられるか、専門工事業の実務範囲で具体的に示す。JWNET本体への登録・入力操作はAIが触らない領域として線引きする。

テーマ別の入口記事

新着記事

この記事のようなことを、御社の書式でやりたい方へ

御社の書類仕事のうち、どれから手放せるかを無料経営診断(オンライン60分)で棚卸しします。御社の業務でどこまでいけるかは、その場で動かしてお見せします。売り込みの電話はしません。

← 記事一覧に戻る